素数定理とは

今回は素数の話です。1と自分自身にしか約数を持たない2以上の自然数を素数といいます。いいかえると、自分自身より小さい2数の積に分解できないような2以上の数ですね。小さい方からみてみると次の通り。

2,3は素数です。

4は2×2と分解できますから素数ではありません。

5は素数です。

6は2×3と分解できますから素数ではありません。

7は素数です。

8は2×4と分解できますから素数ではありません。

9は3×3と分解できますから素数ではありません。

10は2×5と分解できますから素数ではありません。

 \cdots

さて、\(  x \)以下の素数の個数を\(  \pi(x) \)とかくことにします。今回はこの\(  \pi(x) \)の様子をみていきましょう。例えば(上の計算でやったように)10以下の素数は2,3,5,7の4つですから、\( \pi(10)=4  \)となります。

\(  \pi(100) \)あたりまで自分の手で一度は求めておきたいですね。是非、100以下の自然数を紙にかいて、素数でないものに次々とバツを書くことで100以下の素数を求めてみましょう。

でもそれ以上大きい数になると紙とペンだけで\(  \pi(x) \)を求めるのはかなり大変な作業になってきます。そこで今回は下に埋め込まれた計算機を利用して、\(  x \)が

\(  100=10^2, 1000=10^3, \cdots 1000000=10^{7} \)

の場合についてそれぞれ\(  \pi(x) \)を求めてみましょう。

下の画面に左右に動かせるスライダーがありますが、細かい数値が指定しにくいという場合には、入力窓から数字を入れて計算ボタンを押してみてくださいね。

最後の100万をいれたときの計算は数十秒かかります。 気長に待ちましょう。

(スマホの場合、大きい数の場合はブラウザが落ちることがあります。10万ぐらいにしといた方が無難です。すみません。)

…上の計算機を信じて結果を書くと以下のようになります。

\(  \pi(10)=4 \)

\(  \pi(100)=25 \)

\(  \pi(10^3)=168 \)

\( \pi( 10^4)=1229 \)

\(  \pi(10^5)=9592 \)

\(  \pi(10^6)=78498 \)

このままだとあまり規則が見えてこないのですが、ここで\( \frac{x}{\pi (x)}  \)を計算することで、\(  \pi(x) \)の変化の様子が見えやすくなります。

\(  x \) \( \displaystyle  \frac{x}{\pi(x)} \)
\(    10\) 2.5
\(   10^2\) 4.0
\(   10^3\) 6.0
\(  10^4 \) 8.1
\(   10^5\) 10.4
\(  10^6 \) 12.7

どの箇所でも、\( x  \)が10倍されるごとに\( \displaystyle  \frac{x}{\pi(x)} \)が2よりちょっと大きいぐらいずつ増えていることがわかるのではないでしょうか。この規則は\(  x \)をもっと大きくするとさらに明確になり、

\( 10^7 \) 15.0
\( 10^8\) 17.4
\( 10^9\) 19.7
\(10^{10}\) 22.0

…のように、\(  x \)が10倍されるごとに\( \displaystyle  \frac{x}{\pi(x)} \)が約2.3ずつ増えていることがわかります。

ここで考えましょう。\(  x \)の値が\(  10, 10^2, 10^3, \cdots  \)と\(  10 \)倍されるごとに\(  y \)が一定量増えるような関数と言えば何でしょう?…

…正解は対数関数ですね。実は、先ほどの\( \displaystyle  \frac{x}{\pi(x)} \)はほぼ自然対数\(   y=\log x\)と同じような増え方をすることが知られています。\(  x=10^n \)のとき\(  y=\log10^n=n\log 10=2.3n \)となり、これは先ほどの表でまとめた結果「\(  x \)が\(  10 \)倍されるごとに(つまり\(  x=10^n \)の\(  n \)が一つ増えるごとに)値が2.3ずつ増える」と対応しています。そしてこの内容は数学的にも正しいことが証明されていて、\( \displaystyle  \frac{x}{\pi(x)} \)を\( \displaystyle  \log x \)で割った比の極限が1、すなわち

\( \displaystyle  \frac{x}{\pi(x)}\div \log x\to1 \ (n\to \infty) \)

が成り立ちます。主役の\(  \pi(x) \)を主語にすると

\( \displaystyle  \pi(x) \div\frac{x}{\log x} \to1 \ (n\to \infty) \)

です。定理の形で述べておきます。

[box class="blue_box" title="素数定理"]

\(  x \)以下の素数の個数\(  \pi(x) \)に対して、

\( \displaystyle  \pi(x)\sim \frac{x}{\log x} \)

が成立する。ただし、記号\(  \sim \)は両方の関数の比の極限が1に収束することを表すものとする。

[/box]

素数定理の証明は1896年に PoussinとHadamardによって複素関数論を使ったものが証明されています。その後"初等的な"証明も発表されていますが、証明にはそこそこの準備を必要とします(まとめたい…)。

今回はこの辺で。

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