今回の内容(プラスα)の動画版→一次不定方程式、3つの解法
一次不定方程式の特殊解を求める方法を2通り紹介します。2019年のセンター試験で出題されたものを利用することにしましょう。
[box class="blue_box" title="問題"]等式\( 49x-23y=1\)を満たす整数\( x,y \)の組を一つ求めよ。
[/box]まずはユークリッドの互除法を素直に利用する解法です。数学Aの教科書にもある"由緒正しい"方法となります。
[box class="glay_box" title="(方法①)"]49と23に互除法の計算を行うと、次のようになる。
\( 49=23\cdot 2+3 \) 移項すると\( 3=49-23\cdot 2 \)…①
\( 23=3\cdot 7+2 \) 移項すると\( 2=23-3\cdot 7 \)…②
\( 3=2\cdot 1+1 \) 移項すると\( 1=3-2\cdot 1 \)…③
③、②、①を順に使って\( 1 \)を49の何倍かと23の何倍かで表すことを試みる。
\( 1=3-2\cdot 1 \)←③より
\( \ \ =3-(23-3\cdot 7)\cdot 1 \)←②より
\( \ \ =3\cdot 8-23\cdot 1 \)
\( \ \ =(49-23\cdot 2)\cdot 8-23 \)←①より
\( \ \ =49\cdot 8-23\cdot 17 \)
すなわち
\( 49\cdot 8-23\cdot 17=1 \)
となる。したがって、求める整数\( x,y \)の組の一つは\( x=8, y=17 \)となる。(終)[/box]
数字に数字を入れる計算がやや難しいという場合には、本質的な違いはありませんが、次のように最終的に使いたい数字を\( a=49, b=23\)などとおくと少しやりやすくなるかもしれません。
\( a=b\cdot 2+3 \) 移項すると\( 3=a-b\cdot 2 \)…①'
\( b=3\cdot 7+2 \) 移項すると\( 2=b-3\cdot 7 \)…②'
\( 3=2\cdot 1+1 \) 移項すると\( 1=3-2\cdot 1 \)…③'
上①'〜③'を使って
\( 1=3-2\cdot 1 \)←③'より
\( \ \ =3-(b-3\cdot 7)\cdot 1 \)←②'より
\( \ \ =3\cdot 8-b\cdot 1 \)
\( \ \ =(a-b\cdot 2)\cdot 8-23 \)←①'より
\( \ \ =a\cdot 8-b\cdot 17 \)
となる。
次に、私が気に入っている方法を紹介します。この方法は数研出版の何かの問題集の解答に「こんな方法もある…」と遠慮気味に書いてあったものですが、もう少し胸を張っても良いスバラシイ方法だと思います。
[box class="glay_box" title="(方法②)"]元の問題は、係数が大きいので当てはまる整数\( x,y \)が探しにくい。そこで、大きい係数の中から小さい係数が何セットとれるか、という工夫をして登場する係数が小さくなる工夫をする(要するに割り算をする)。
\( 49x-23y=1\)
49は23が2つ分(46)と残り3に分けられるので
\( 23\cdot 2x+3x-23y=1 \)
となる。ここで23の項をまとめる。
\( 23(2x-y)+3x=1 \)
置き換え\( 2x-y=z \)…(A)をすると
\( 23z+3x=1 \)
を得る。係数が小さくなったおかげで、\( z=-1,x=8 \)…(B)が当てはまるのがスグにわかる(もしまだ2桁以上でわかりにくいような場合には同様に「大きい係数の中から小さい係数が何セットとれるか」という計算をもう少し行うと良い)。(A)と(B)から芋づる式に\( y=17 \)が計算できる。よって\( x=8,y=17\)が一つの整数解となる。[/box]
(方法①)および(方法②)について一応補足しておきます。特殊解に指定がない場合はよいのですが、例えば「\( x \)の絶対値が一番小さいもの」などと特殊解に対して何らかの指定があるような場合は、一般解を求めておいたほうが安心です。一般解を求めるためには、元の方程式と特殊解の入った式を次のように並べ、
\( 49x-23y=1 \)
\( 49\cdot 8-23\cdot 17=1 \)
上から下の式をひいて移項して
\( 49(x-8)=23(y-17) \)…④
という形を作ればよいです。49と23は互いに素なので\( x-8 \)は23の倍数、よって\( x-8=23k \)(\( k \)は整数)と表され、④とから\( y-17=49k \)となります。したがって一般解は\( x=8+23k, y=17+49k \)(\( k \)は整数)となります。\( k \)をいろいろに調整すれば当てはまる整数解がすべて出すことができますので、問題文の注文にあうものを答えればよいでしょう。
さて、高校生目線でいえば、(方法①)は計算がめんどくさく、センター試験などのことを考えれば(方法②)の方が実用的に感じるはず。しかし方法①は当てはまる数を探すというような計算が不要で、「決まった手順通りに計算さえすれば答えがでる」という特徴があります。手計算がメインの状況ではあまりありがたさを感じにくいですが、コンピュータなどでプログラムを組む場合などは「決まった手順通りに計算さえすれば答えがでる」という方が価値が高いわけです。コンピュータは手順さえ指定すれば人間よりも高速で正確に計算してくれますからね。その辺の良さは授業等で伝えたいものですね…
今回はこの辺にします。(方法①)を行列を用いて表現する方法については別記事でまた扱いたいと思います(下の動画内では説明しています)
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