今回は、数学3の微分積分まで学習した方向けの内容です。
数学1の割と最初の方で、有理数・無理数の話があり、や円周率πは無理数だぞー、と習います。
が無理数というのは数学1で背理法を学習するときに証明することにわるわけですが、円周率πについてはしばらく無理数と信じて高校生活を過ごすことになります。そしてそのまま卒業!…一度も無理数であることの証明を知らずに過ごす方がほとんどかと思われます。ということで今回はそれを証明をかいておきます。小平邦彦著『数学の学び方』にある、1947年にNivenが発表した、高校数学の道具のみで証明する方法です。
円周率πは無理数である
(証明)を任意の自然数として
とおき,積分
…①
を考える。次の2つのステップによって矛盾を導く。
(ステップ1)十分大きい任意のおよび任意の自然数
で①の値は0より大きく1より小さいことを示す。
(ステップ2)を有理数と仮定し,①の
を”
の分母”とすれば①の値が整数になることを示す。
(ステップ1)を示す
二次関数の最大値は
であるから
である。また、のとき
だから
となる。これをから
まで積分して
ここで,一般に任意の正の実数に対して
となることから(証明は本記事下部参照),十分大きい任意のに対して
が成り立つ。これで(ステップ1)が示された。
(ステップ2)を示す。
部分積分を二回使うと
となる。これを回繰り返す。
は
についての
次式であるから
となることに注意すると
となる。により
であるから
…①
となる。ここで,を二項定理で展開すると
である。は
について
次の項から始まるので
…②
である。また,回微分すると
(ただし,
は定数項が
の多項式)
という形になる。よって
…③
となる。ここでが有理数,すなわちある自然数
があって
と表された仮定する。内の
は任意としていたから
の分母
と同じものと考えてよい。このとき③の右辺は
により整数となる。①の右辺についての項の値は②より
であり,また
の項に対しては整数であるから結局
の値が整数であること(ステップ2)が示された。
(ステップ1)および(ステップ2)で示した主張が同時に成り立つのは矛盾である。よって(ステップ2)内の”が有理数である”という仮定が誤っている。したがって
は無理数である。(証明終)
こんな証明よく思いついたな〜!という感じです。多分自力では一生思いつかないでしょう。道具が少ないときは巧みなアイディアが必要ですね。
(どんな道具でも使って良いとすると、の無理数性の証明はどうやってやるのだろうか…)
最後に、今回の参考文献と、愛好家にオススメの本を紹介しておきます。
では。
任意の正の数 に対し,十分
を大きくとれば
とできる。よって
とできる。ただし とおいた。