数学リアル活用例が分かる本、15冊

今回も教員向けの記事です。

中学・高校で数学を教える立場であれば、数学がリアルで役に立っている話題をできるだけ多く知っておきたいですね。授業で話す際のネタが増えて、教材の調理の仕方が豊富になることで、授業を行う上でいい効果があると思います。

自分自身が自信を持って授業ができるようにするためにも、忙しさの中でも、何とか勉強を続ける、という姿勢を持ちたいものです。

この記事では、数学のリアル活用例が、数学的な議論とともに書かれた書籍を15冊まとめます。この15冊というのは思いつくまま手当たり次第にリストアップしてみたもので、何か厳選したものという訳ではありませんので悪しからず。

1.暗号の整数論

暗号の整数論―素数研究が生きるセキュリティ技術 (現代技術への数学入門)

暗号の整数論―素数研究が生きるセキュリティ技術 (現代技術への数学入門)

 

結構有名になったかと思われるRSA暗号の話題について、初等整数論による解説。特に予備知識は必要なく、ページ数も短いのですぐ読めてしまうと思います。読んでおくと数Aの「整数の性質」の分野の授業で大活躍するはず。

2.フーリエ解析講義

フーリエ解析講義 (KS理工学専門書)

フーリエ解析講義 (KS理工学専門書)

 

 この本はコスパが良くて、フーリエ解析の応用として2つの事例を学べます。まず1つがお腹の断面図を求めるCTスキャンの原理について。X線をいろんな角度から当てたものを360°分積分すると断面図が得られるという式変形が面白い。

2つ目はサンプリング定理について。サンプリング定理は音をデジタル化するための基礎理論で、これがあるからこそ我々は綺麗な音楽をCDあるいはスマホ上などからで聞くことができているのです。

フーリエ解析や超関数という話題に一度でも触れていると読みやすいですが、この本の前半でそれらの解説も行なっているので、頑張れば初めての人でもいけると思います。

コテコテの解析系の話なので、数学3の授業で微積分を教えるときにちょっとした息抜きとして話してもいいと思います。

3.誤り訂正符号入門

誤り訂正符号入門

誤り訂正符号入門

  • 作者: J.ユステセン,T.ホーホルト,阪田省二郎,栗原正純,松井一,藤沢匡哉
  • 出版社/メーカー: 森北出版株式会社
  • 発売日: 2005/09/30
  • メディア: 単行本
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符号理論の話題ということで、デジタル的なものすべてにからんでくると言っても良い技術。自分自身はRS(リードソロモン)符号の理解のために5章を中心にしか読んでいないのですが、きちんと数学的な議論が省かれずに書かれていて充実感を感じながら読んだような記憶があるります。行列式、体といった用語に慣れていると読みやすいと思います。

授業で扱う際には、いきなり誤り訂正符号といっても生徒に伝わらないので、たとえばQRコードをマジックで汚しても読みこみ可能であるということを実演して、そこに誤り訂正符号の技術がある、というような話をすると伝わりやすいと思います。高3生には線形代数の入り口として紹介しても良い。また、符号化復号化の過程では結局やっていることは多項式の四則演算なので、多項式の計算にうんざりした高1,2生にもできる話題だと思います。

4.微分方程式で数学モデルを作ろう

微分方程式で数学モデルを作ろう

微分方程式で数学モデルを作ろう

  • 作者: デヴィッド・バージェス・モラグ・ボリー,垣田 高夫,大町 比佐栄
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 1990/04/09
  • メディア: 単行本
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微分方程式の応用例がいろいろ書かれてあります。話題としては「ロケットの飛行」と「美術品の贋作」の話が特に面白かったですね。

「ロケットの飛行」は2段組ロケットを飛ばす際に、速度をつけて飛ばしたい(地球の引力に逆らって外に飛び出したいので)が、速度を上げるには2段組ロケットの質量比をどのようにすればよいのかという話。文字がごちゃごちゃ入ってはいますが、こんな技術的に難しそうな話題であっても、根本的には「最大値は微分して=0となるところを求める」という高校の教科書例題レベルと同じような手順なんだ、というところが感動的ですね。

「美術品の贋作」は美術作品の顔料に含まれている放射性同位体の割合から、いつ作られた作品なのかを推定する、という話題です。ナチス時代の話でもあり、歴史的な話を織り交ぜても面白いと思います。

5.現象から微積分を学ぼう 

現象から微積分を学ぼう

現象から微積分を学ぼう

  • 作者: 垣田 高夫 ,久保 明達,田沼 一実
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2011/06/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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微積分を基礎から解説している本で、扱っているネタそのものは数は少ないですが、読みやすく書かれていると思います。第2章微分法の曲率半径の話で、2005年のJR宝塚線の脱線事故の話を扱っています。当時の電車の速度、事故が起きた現場でのカーブの曲率半径の情報などから、事故の原因を数理的に考察しています。事故を起こさないための技術者な観点から何ができるのかも考えさせると良いですね。

6.等長地図はなぜできない

等長地図はなぜできない: 地図と石鹸膜の数学

等長地図はなぜできない: 地図と石鹸膜の数学

 

地図の話題です。地図の書き方はメルカトルとかサンソンとかいろいろあるのですが、「任意の地球上の2点間の距離を正しく表す」ような地図は作ることができません。その理由を数理的に解説したのがこの本です。地図の話題をしてから、この話をすると受けそうですね。

7.実験数学読本

実験数学読本

実験数学読本

 

数理的な考察のための、具体的な実験が載っている点が画期的です。実際に再現して、動画で記録してみたいですね。数式での説明もしっかりと書かれています。

8.QEの計算アルゴリズムとその応用

QEの計算アルゴリズムとその応用―数式処理による最適化

QEの計算アルゴリズムとその応用―数式処理による最適化

  • 作者: 穴井宏和,横山和弘
  • 出版社/メーカー: 東京大学出版会
  • 発売日: 2011/08/25
  • メディア: 単行本
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QEなる計算技術の解説。第1章で、2010年実施の国立大学の入試問題が、QEで次々と解かれていくところは個人的にすごくスカッとして気持ちいいですね。高校で教える立場であれば、こういうツールがあるということを知っておくといいですね。さらに、QEが使える場面として石油精製プロセス制御なるバリバリの工学系の話題を紹介しています。入試問題を解くような技術がこういうリアルで役立っていることを知るのは高3生にとってはいい刺激になるのではないでしょうか。

9.機械学習理論入門

ITエンジニアのための機械学習理論入門

ITエンジニアのための機械学習理論入門

 

手書き入力を認識する技術についての紹介です。数学1の統計の話題にもつながりますね。

10.超高速グラフ列挙アルゴリズム

超高速グラフ列挙アルゴリズム?〈フカシギの数え方〉が拓く,組合せ問題への新アプローチ?

超高速グラフ列挙アルゴリズム?〈フカシギの数え方〉が拓く,組合せ問題への新アプローチ?

 

グラフ列挙アルゴリズムで世の中のいろいろな問題を解いています。例えばA駅からB駅までの最短経路を計算するアルゴリズムとか。よく使っている技術ですが中身は全然知らなかったので購入。早く読みます。

11.Rによるテキストマイニング入門

Rによるテキストマイニング入門

Rによるテキストマイニング入門

 

ツイッターのトレンド解析という、よくツイートされた言葉を大きくふわふわと表示させるというような機能をテレビ等でたまに見かけるようになりましたが、それが自分でもできるようです。魅力的な本だったので勢いで買ったもののまだ読んでません。

12.日常現象からの解析学

日常現象からの解析学

日常現象からの解析学

 

ひもを両手で持ったときに垂れてできる曲線、カテナリーのことが書かれた本を探していて見つけたものです。カテナリーの導出のほかには、最急降下曲線の話題がとても勉強になりました。数3の微積分につなげられますね。未読部分も近々読みたいと思います。

13.これなら分かる応用数学教室

これなら分かる応用数学教室―最小二乗法からウェーブレットまで

これなら分かる応用数学教室―最小二乗法からウェーブレットまで

 

画像処理の分野で出てくる、ウェーブレット解析の話題が書かれています。この本だけで具体的な応用例までイメージするのは難しいかもしれませんが、最初の1歩としては丁寧で優れていると思いました。

14.入門オペレーションズ・リサーチ

入門オペレーションズ・リサーチ

入門オペレーションズ・リサーチ

 

 全体を通して読みやすく書かれています。特に「線型計画法」は数2の授業で扱う前に読んでおきたいですね。

15.Excel/OpenOfficeで学ぶフーリエ変換入門

Excel/OpenOfficeで学ぶフーリエ変換入門 (Excel技術実践ゼミ)

Excel/OpenOfficeで学ぶフーリエ変換入門 (Excel技術実践ゼミ)

 

 フーリエ変換を具体的にPC上でやったことが無かったので、試してみるために購入しました。PC上の作業について丁寧に書かれており、初めてでも迷うことなく遊べると思います。当たり前といえば当たり前なのですが、音データそのもの、フーリエ変換した後のデータなどすべてエクセル上の数字の羅列で表現されていて、具体的にデジタル感!をすごく感じた記憶があります。

数学2の三角関数の話題で雑音の除去の話なんかをしてあげると良いと思いました。

以上15冊の紹介でした。まだ半分ぐらいしか読めてないのでどんどん読んでいきたいです。