高校数学の学習指導要領の変遷【平成の4改訂編】

戦後の学習指導要領がまとめられたアーカイブページを見つけました。

学習指導要領データベースインデックス

自分の研究用に、特徴と本文リンクをまとめておきます。どうしても横に広げて表示したほうが見やすいので、PCでの閲覧を想定しています。なお、現行の学習指導要領は第6次で、東京五輪以降に実施される新しい学習指導要領は第7次になります。

 

高校数学平成の4改訂(第4次〜第7次)

第4次(H1(1989年))

数学1(4単位)

数学A(2単位)

数学2(3単位)

数学B(2単位)

数学3(3単位)

数学C(2単位)

リンク

目標は「数学における基本的な観念や原理・法則の理解を深め、事象を数学的に考察し処理する能力を高めるとともに数学的な見方や考え方のよさを認識、それらを積極的に活用する態度を育てる。」

【数学1】二次関数、図形と計量、個数の処理、確率

【数学A】数と式、平面幾何(合同変換、相似変換)、数列(二項定理含む)

【数学2】指数・対数・三角関数、図形と方程式、微分積分の考え(3次の整数程度)

【数学B】ベクトル、複素数平面、確率分布、算法とコンピュータ

【数学3】関数、極限、微分、積分

【数学C】行列、曲線、数値計算、統計処理(検定は削除)

第5次(小・中H10(1998年)、高校はH11)

 

数学基礎(2単位)

数学1(3単位)

数学A(2単位)

数学2(4単位)

数学B(2単位)

数学3(3単位)

数学C(2単位)

リンク

目標に「数学的活動」が初登場 

「数学における基本的な概念や原理・法則の理解を深め,事象を数学的に考察し処理する能力を高め,数学的活動を通して創造性の基礎を培うとともに,数学的な見方や考え方のよさを認識し,それらを積極的に活用する態度を育てる。」

「〜は扱わない」、「〜には深入りしない」などの”はどめ規定”が多く示されている。

【数学基礎】数学と人間の活動、社会生活における数理的な考察、身近な統計(「身近な事例を取り上げるなど生徒が主体的に学習できるようにし,理論的な考察には深入りしないよう配慮する」となどの注意がき)

【数学1】数と式、二次関数、図形と計量(中学で一次不等式や二次方程式の解の公式を扱わなくなったため、ここでそれを初めて扱う)

【数学A】平面図形、集合と論理、場合の数と確率(二項定理含む、期待値)

【数学2】式と証明、高次方程式、図形と方程式、三角・指数・対数関数、微分積分の考え(微分は3次、積分は2次程度)

【数学B】数列、ベクトル、統計とコンピュータ、数値計算とコンピュータ

【数学3】極限、微分、積分

【数学C】行列、式と曲線、確率分布、統計処理

第6次(小・中H20(2008年)、高校はH21)

 

数学1(3単位)

数学A(2単位)

数学2(4単位)

数学B(2単位)

数学3(5単位)

数学活用(2単位) 

リンク

 目標は「数学的活動を通して,数学における基本的な概念や原理・法則の体系的な理解を深め,事象を数学的に考察し表現する能力を高め,創造性の基礎を培うとともに,数学のよさを認識し,それらを積極的に活用して数学的論拠に基づいて判断する態度を育てる。」

【数学1】数と式、図形と計量、二次関数、データの分析、[課題学習]

【数学A】場合の数と確率、整数の性質、図形の性質、[課題学習]

【数学2】いろいろな式、図形と方程式、指数・対数・三角関数、微分積分の考え(微分は3次、積分は2次程度)

【数学B】確率分布と統計的な推測、数列、ベクトル

【数学3】平面上の曲線、複素数平面、極限、微分、積分

【数学活用】数学と人間の生活、社会生活における数理的な考察(行列による表現、データの分析なども扱う)

第7次(小・中H29(2017年)、高校はH30)

 

 

 

 

 

 

数学1(3単位)

数学A(2単位)

数学2(4単位)

数学B(2単位)

数学3(3単位)

数学C(2単位)

 

リンク(pdf)

目標は資質能力の3つの柱に沿って(1)〜(3)で示されている。

「数学的な見方・考え方を働かせ,数学的活動を通して,数学的に考える資質・ 能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 数学における基本的な概念や原理・法則を体系的に理解するとともに,事象を数学化したり,数学的に解釈したり,数学的に表現・処理したりする技能を身に付けるようにする。
(2) 数学を活用して事象を論理的に考察する力,事象の本質や他の事象との関 係を認識し統合的・発展的に考察する力,数学的な表現を用いて事象を簡潔 ・明瞭・的確に表現する力を養う。
(3) 数学のよさを認識し積極的に数学を活用しようとする態度,粘り強く考え 数学的論拠に基づいて判断しようとする態度,問題解決の過程を振り返って 考察を深めたり,評価・改善したりしようとする態度や創造性の基礎を養う。 」

【数学1】数と式、図形と計量、二次関数、データの分析(仮説検定の考え含む)、[課題学習]

【数学A】図形の性質、場合の数と確率、数学と人間の活動(互除法、二進数、空間座標の考え含む)

【数学2】いろいろな式、図形と方程式、指数・対数・三角関数、微分積分の考え(微分は3次、積分は2次程度)、[課題学習]

【数学B】数列、統計的な推測(仮説検定含む)、数学と社会生活

【数学3】極限、微分、積分

【数学C】ベクトル、平面上の曲線と複素数平面、数学的な表現の工夫

(いくらかメモ)

・仮説検定の考えが数学1に導入されますが、これは第3次(S53)の指導要領で「確率・統計」の分野、

あるいは

第2次(S45年)の指導要領で「数学3」

として扱われていた内容であり、平成以降の指導要領では高校数学では扱わない内容である。必履修科目で仮説検定を扱うことから統計を学び直す需要(特に教員の)が高まる気がします。

・第5次改訂は学習内容が最も削減された時期の指導要領です。数学基礎という科目から漂う「お前らが難しいことやってもどうせできないから、これでもやってろ」感をみていると悲しくなります。第6次の数学活用はもう少し社会生活で役立つ意義のようなものを見せようとしたものだとは思いますが圧倒的なシェア率の低さ(体感)で普及はしませんでした。しかし内容としては面白く、これが第7次の各科目内に数学A「数学と人間の活動」、数学B「数学と社会生活」、数学C「数学的な表現の工夫」に散りばめられたという印象です。

 

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高校数学の学習指導要領の変遷【昭和の3改訂編】 – すうがくブログ