なぜ"微分の逆"で面積がでるのか

高校の数学の教科書では定積分\displaystyle \int_{a}^{b} が”微分の逆”として定義されます。すなわち\displaystyle  \int_{a}^{b}f(x)dxの意味は、微分してf(x) になるもの\displaystyle F(x) を一つ見つけてきて、それに\displaystyle b, a を代入したものの差をとりなさい、と。式で書くと、

 \displaystyle \int_{a}^{b}f(x)dx=\left[F(x)\rule{0pt}{2.5ex}\right]_{a}^{b}=F(b)-F(a)

です。そして教科書の内容が進むと、これが面積を表すと書かれています。

定理(定積分と面積)

f(x)\geqq 0 のとき、y=f(x) と直線 x=a, x=bおよびx 軸で囲まれる領域の面積は

 \displaystyle \int_{a}^{b}f(x)dx

と計算できる(下図の赤部分の面積が微分の逆\displaystyle \int_{a}^{b}f(x)dx と同じ!)。

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微分の逆と定義した\displaystyle \int_{a}^{b}f(x)dx がいつのまにか面積を表すことになっているのです!

 

この理由は、微分して\displaystyle f(x) になるものが面積(関数)だから、です。もう少しちゃんというと、領域の右端を b でなくt に変えた面積の関数S(t) について、その微分が f(t)になるからです。

 

微分の計算に慣れてくるほど、例えば

 \displaystyle (x^3)'=3x^2

のように各種関数に対して形式的な計算をたくさん行うようになるため、微分の元々の意味である、”平均変化率の極限”という意識が薄れがちです。まずは微分の意味をしっかり思い出して以下の説明を読んでみてください。

 

繰り返しになりますが微分というのは、平均変化率

 \displaystyle \frac{S(t+h)-S(t)}{h}

\displaystyle h\to 0 としたときの極限です。

 

面積の関数S(t) において平均変化率は、(h が正のとき)次の図の赤く塗られた部分の面積S(t+h)-S(t) を、その横幅\displaystyle h で割ったものです。

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面積S(t+h)-S(t) \displaystyle h がうーんと小さければ、\displaystyle  f(t)\cdot hという長方形で近似できます。すなわちこれを\displaystyle h でわった

 \displaystyle \frac{S(t+h)-S(t)}{h}

というのは、ほぼ\displaystyle f(t) のことだよね、すなわちS(t) の微分が f(t)だよね、といえるわけです(もうちょいしっかりした説明は以下に回します)。

 

よって、面積S(x) ともとの f(x)は、微分という操作で繋がっているわけです。

 面積S(x) →(微分)→もとの関数 f(x)

じゃあ関数f(x) を微分の逆、すなわち積分すれば面積 S(x)がわかるだろう、これが”微分の逆”で面積がでる理由です。

 面積S(x) ←(微分の逆=積分)←もとの関数 f(x)

 

 

歴史的には積分は微分の逆としてではなく、面積から定義されています。すなわち、積分と微分は元々別の話だったのです。それが、

「面積求めるには微分の逆すればいいやん!」

ということが偉大な方々(ニュートン、ライプニッツ)により発見されたため、それ以降微分と積分がまとめて扱われるようになったのです。

 

繰り返しになりますが、高校での一般的な数学の教え方ですと、効率を重視してか、微分の逆を積分と定義します。すると、これがなぜ”面積”と繋がっているのかよくわからない、という疑問が多々発生するわけです。この辺もしっかりと授業で話せるようにしたいですね。

 

さて、一応もう少しまともな説明を最初から書いておきます。簡単のため、 fは単調増加としておきます。

 

(証明)

まず,面積について、領域の右端が動く関数として考える。すなわちS(t) を、曲線y=f(x) 、直線x=a , x=tx 軸で囲まれる領域の面積を表すものとする。 tが変化するごとに面積が定まるから、これはt の関数である。

 

さて、この関数S(t)  tで微分してみよう。微分は平均変化率\displaystyle \frac{S(t+h)-S(t)}{h} h\to 0 としたときの極限として定義されるのであった。

一般の場合だと少々ややこしくなるので、今回は関数 y=f(x)が下図のように、 t\leqq x\leqq t+hの範囲で”単調増加”である場合に限って考えることにする。平均変化率の分子S(t+h)-S(t) は下図の赤で塗った領域の面積を表すことに注意しよう(図は再掲)。

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上の赤で塗った部分の面積S(t+h)-S(t) は、

・(高さ f(t)、底辺h の長方形の面積)以上であり、かつ

・(高さ f(t+h)、底辺h の長方形の面積)以下

である。すなわち

\displaystyle hf(t) \leqq S(t+h)-S(t)\leqq hf(t+h)

である。すべての辺を\displaystyle h で割ると、

\displaystyle f(t) \leqq \frac{S(t+h)-S(t)}{h} \leqq f(t+h)

であり、\displaystyle h\to0 として

\displaystyle f(t)\leqq S'(t)\leqq f(t)

を得る。よって

 \displaystyle S'(t)=f(t)  

でなければならない(はさみうちの原理)。変数t x に取り替えると

 \displaystyle S'(x)=f(x) …①

 となる。

続いて、”微分の逆”として定義された定積分\displaystyle \int_{a}^{b}f(x)dx を計算しよう。①より、微分して\displaystyle f(x) になる関数として\displaystyle S(x) があるから

 \displaystyle \int_{a}^{b}f(x)dx =\left[S(x)\rule{0pt}{2.5ex}\right]_{a}^{b}=S(b)-S(a)

ここでS(a) は直線 x=aと直線 x=aの間の面積を意味するが、幅が0 なのでS(a)=0 である。したがって

 \displaystyle \int_{a}^{b}f(x)dx=S(b)

となる。

S(b) y=f(x) と直線 x=a, x=bおよびx 軸で囲まれる領域の面積を表すからこれで定理が示された。(証明終)

 

 

完璧性を求めると上の証明は色々と穴があります。途中単調増加とか仮定してますし、 hが正のときしか考えていないし、 h\to 0のときにf(t+h)\to f(t) となるのは fの連続性なんかをこっそり使っている!…でもまぁ数学2をはじめて学ぶ生徒向けには教育的配慮ということであんまり細かいことを最初から言わなくてもいいんじゃないかと思います。「面積を関数とみなして微分してみた」という発想のユニークさを感じ取ってもらえればまずは十分ではないでしょうか。

 

今回はここまでです!

 

(補足)

上で言及した議論の穴は多少の修正でカバーできます。y=f(x)の区間[t, t+h]での最大値最小値を M, mとすればf の単調性を仮定せずに

 \displaystyle hm \leqq S(t+h)-S(t)\leqq hM

が言えて

\displaystyle m \leqq \frac{S(t+h)-S(t)}{h} \leqq M

 fの連続性から( fの連続性を仮定するのは普通)h\to 0 のときm, M\to f(t) で上と同様の議論が成り立ちます。またhが負のときも同様な不等式を得ることができます。